デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

詩と詩人&POETRY SLAM JAPANについて

言葉のスラム・バトルトーナメント、主に『POETRY SLAM JAPAN(以下:PSJ)』について、感じていることを感じたままに書きます。

http://poetryslamjapan.com/


基本、言葉のスラムは、出場者が言葉の表現を競い合う対戦形式のイベントで、与えられた制限時間(3分〜5分が多い)の間に、ステージで何を表わせるか? その結果、どれだけお客さんや審査員の心を動かすことができるか? で判定が決まります。


今まで何回か、それらに出場しましたが、僕は大概一回戦敗退。納得できる結果です。 勝ち上がった方は、何かが突き抜けていて、さらにバランスも良い。言葉が、万人に響く普遍を突いている。身体性もある。その時の僕には、それがなかった、というだけだと思ってます。


でも大概、言葉のスラムに出ると、何かしら勝敗とか賞金では還元できない、ものすごいトロフィーがついてきました。一回戦負けしたSSWSでは、審査員の馬野ミキさんに唯一評価され、「俺はやっていける!」と確信・勘違いできた。

http://d.hatena.ne.jp/macromoai/20171029/1509232088
(↑馬野ミキさんとの出会いについて)

PSJでは蛇口さんと、ステージ上で出てしまう震えの話をし、実際、蛇口さんがライブ中に、ずっと止まらなかった自分の震えを、「ここ、風強いな」と即興で表現。カッコ良くステージを去る姿も目の当たりにし、惚れ込み、猛烈にアタック。結果、幸運にも友情が生まれました。

http://blog.livedoor.jp/poetryplanet/archives/69112455.html
(↑蛇口さんと出会い、気付かされたことについて)


それが、来年3月に公演する、蛇口さんシナリオ&もりくん主演のひとり芝居『横なぐりの成長痛』を、飯田華子さんやかほりさん、しゅうくんたちと、一緒につくらせて頂くことにもつながりましたし。

片や、審査・勝敗の結果や数値の決定の仕方は、そのまんま、審査員の価値観や現在の日本や社会、文化を表していると思う。それをそのまま認めるのが、多様性であると僕は思っています。
審査は、会場で指名されたお客さんが審査員になり、各表現に対し、10点満点形式・小数点第1位まで点数を出します。ざっくりいうと、5人の審査員の、真ん中三人の数字の合計を競うというものです。

10点近く入れる審査員もたまにはいるだろうし、数字が6.7くらいで固まる現象もまあわかる。それが今の日本を映す鏡なのだろうと。


僕はそんな状況と向き合いながら、一体自分は、自分の表現を通して、その状況をどう変えていきたいのか? どんなアクションを起こせば、それが変わっていくのか? を考えるようになりました。つまらないのは、今の状況や日本ではなく、その中で考えたり、工夫したりしない自分だと気付かされもしました。


詩の界隈に出入りするようになり、「詩で純粋に食ってる人は、谷川俊太郎さんだけ」って良く聞くけど、それは谷川さんが、自分は詩しかできないが、食っていく必要性があり、それを仕事につなげお金に還元するための営業や、媒体に合わせた創作活動を、半端なくやったから。今も、受注生産だし。受験雑誌に詩を売り込み、受験生にうける詩を書く。そういう工夫や努力をやって自ら仕事をつくり、結果を創り出したから。


PSJはじめ、詩の界隈に出入りして知ったのは、この界隈に、プロ意識のある方は少数だということ。 技術的にプロ意識はあっても、特に経済活動に結びつけようとしている方は、ほとんど居ないこと。 詩とは何か? を、突っ込んで考えている方が意外と少ないこと。またそれがあっても僕とは異なることなどを認識しました。


(そもそも僕は、音楽がやりたいけど、楽器ができないから、言葉を楽器にして音楽をはじめた。それが、僕の『詩』。自然やこの宇宙空間に流れてる、透明な音を表わすのに、言葉という音色を使う、それだけ。そういうことを意識的にやってる詩人さんは、僕は今のところ、二人くらいしか出会っていない。もちろん、僕も変わったし、人間や感情を中心に、詩にするようにもなっていった。でもこれは、ミクロコスモスとマクロコスモスの違いでしか、ない)


もちろんこれらは、全然悪いことじゃないし、自由に、好きにやるのが詩だから、全然良いと僕は思っています。詩の界隈の状況説明をその外側の方にすると、大概「それってSNSだね」っ本質を突かれる。それも合っている。僕は昔から大好きな趣味としてSNSをやっているから、SNSは否定しないし、大歓迎。


現在は、パーソナルメディアの時代であり、今後、社会はプライバシーとか、プライベートって概念が、ボーダーになっていく。逆にその状況こそが、詩が活躍し、広がり、日常化していく流れになるとも感じています。


ニホンザルが、ある地域で波打ち際でイモ洗いをはじめたと思ったら、それは同時多発的なシンクロニシティとして、ほかの地域でも同時に行われていた。
そんな現象が、いま、世界には浮き上がって来ているし、それが一斉に連火し合うのを、ただ待つだけでいい。

詩は加速している。 詩は個人的でもいいし、普遍的でもいい。ふたつはミクロコスモスとマクロコスモスの違いでしかなく、同意だから。


僕は単純に詩が大好きで、せっかちで短気だから、僕が生きてるうちに早く広まればいいな〜って思って、まず自分が文学賞を取ろうと思ったという側面もあります。まわりの状況から、少しでも変わればと思い。

「なんだ、ペヨー太くんが取れるんなら、俺でも取れんじゃね?」って気付いて欲しいし、まわりの詩の界隈の方たちが、単純に僕と同じ賞に応募したら、たぶん僕の順位はさがる。
でもみんなは、そんなもの欲しくて詩をやってる訳じゃないんだろうなとも、最近は感じています。

「女の子を口説くために朗読してた」と、いまいまおくんも言ってたし。

本当に賞やお金が欲しかったら、人は取らずにいられないし、取りに行くよう動くだろうから。


PSJ主催の村田さんに、以前「PSJで優勝したら何かもらえるんですか? 」って聞いたら、「賞金はない。詩はお金には還元できないから」って答えが返って来て、その時は、「じゃあなんで、出演者やお客さんからお金取ってるのかな?」って、少し矛盾を感じ、不思議だったけど、それが今の様々な現状なんだろうな〜ともわかっている。


村田さんだって、詩がお金には還元できないとしても、どうにかそれに見合う価値を付けて、バーンと勝者に賞金は出したい側面もあるんではないかな? とも少し感じてはいます。


例えば、イベントの売り上げが200万くらいプラスになっても、村田さんが、「詩はお金には還元できない」って信念から、優勝者たちに何にもあげないっていうんならそれはそれで一貫しているけど。たぶん、パリの旅費の足しにしたりするような気がする。


だから、UPJは、そこを考えて来たのかな? とも感じていた。クラウドファンディングなら、払いたい人が払いたいだけ応援するし、運営資金は必要だし。 これらのことは、今後、自分の活躍方針に関わるので、よく向き合いたい。


僕は、「ただより高いものはない」を真理だと感じています。
結局どんなビジネスも、「ただより高い何か」を得るために、経済的なシステム・仕組みを駆使して、実現したり、実現しようとしているだけだし。各人が求める「ただより高い何か」は、個人差だし、ブラックな感情を満たしたり、自分の病み・闇を埋めたり、ごまかしたり、抗ったりするために、その仕組みを社会に敷く方もいる。もちろん、その逆もしかり。単純に、愛を循環・流通させるためにはどうしたらいいのか? って考え、仕組みに落とし込む方もいる。そういった陰陽の抗争を含め、いまの経済社会は成り立っていますし。


ならば僕が、「はじめから「ただ」にすればいい」、とも考えはじめています。
もちろん、これは僕の状況が許すならであり、誰かに仕事を頼むときには、対価を捻出しなければならないと思う。でも、現在僕は、経済的に不自由はないし、詩や創作をお金に換えなくても、一般事務業など、他の仕事にも務ける状況になって来た。だから、独りで仕事をする場合には、「はじめから「ただ」にすればいい」って言えることであって、谷川さんのように「俺は詩人しかできない」って状況を抜けたから言える現実。


そして最近、自分は何故詩人になったのか? その運命を詩的に読み解くことができました。

僕自身、自分の人生をやり直し、回復するために、詩人になる必要性があったのだな、と感じたから。 僕には深いトラウマがあり、その根が深いことにさえ、詩人にならなければ気付けなかった。深い闇の中にあるトラウマを取るためには、見えない・聴こえない情報を察知し、あらゆるもの(主に記憶)を、詩的に結びつけ、そこから今までに気付けなかった・見えなかった事実をイメージする能力が必要だったのです。


つまり僕は、自分にとって「ただより高いものはない」の、最上級の報酬を、詩にもたらしてもらったのです。現在の社会的には、まだ、いのちはお金では買えないですから。

そんな側面もあり、詩と、詩に関わるみなさんには、深く感謝しています。ありがとうございます。これからの時代は、みんなが詩人になるか? ロボットになるか? になってくるのかも知れませんね(もちろんこれは、極端な比喩ですが)。心を込めてメールを打つ人も、年々少なくなる一方だし。僕にはその状況が、ある種、シンボリックに映ります。


以前、PSJの申し込みをした時、主催者の村田さんと何度かメールのやり取りをし、すごく人間臭かったので、「あ、いいイベントになりそうだし、頑張ろう」と思いました。 その感じで、PSJも続いたらいいな〜と思っています。
いつか、勝てそうだなって時が来たら、また出たいと思います。きっとずっと先になるとは思いますが。



植岡勇二・ペヨー太

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『馬野ミキ:きみにお金をあげるよ』