デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

最近ふれ、好きになった作品紹介

小説部門


中村文則『掏摸』


闇社会に生きる者たちの現実、悲しさや、恐ろしさを、掏摸の主人公を通して描く。すごいドライブ感を持った小説。一気読みせずにいられない、どんどん加速度を上げていくストーリー。僕的には久々に、メディアに広く露出している作品にふれ、世間にはこんな面白い作品がゴロゴロしているのか! と、『目から鱗』後の、インプット期間に入るきっかけを与えてくれた作品でもあります。


森下くるみ『虫食いの家』


私小説的作品。森下さんの文章は『東京荒野』でしか読んだことはありませんでしたが、その根に、自分に対して嘘をつかない姿勢、つまり、読者に対して自分のありのままを提示する姿勢があり、そこに信頼にも似た感情を頂きつつ読み進めました。
『虫食いの家』は、かなりハードな内容ですが、余白感のあるシンプルな言葉でつづられたそれらには、不快な重さはなく、そのしなやかさに驚かされました。それは作者のしなやかさでもあるように思いました。



児童文学部門


はなみねかおる『そして五人がいなくなる』


甥っ子がこの本を、読書感想文の宿題に持って来ていて、僕が隙間で借りて、一時間くらいで一気読みして泣きまくり、です。
物忘れの激しい名探偵のおっさんと、活発な三つ子の女の子が織りなす事件簿。
オープンしたての遊園地を舞台に、犯人が天才少年を次々に予告誘拐するお話。犯人が盗んだものと、子供にとって大切なことは何か? が、重なる瞬間に涙。社会風刺、問題定義が巧み。


はやみねかおる『都会のトム&ソーヤ』


幻のゲームを探す二人の中学生男子。その目的は、自分が世界一のゲームをつくる際に、幻のゲームと自作のゲームが似てしまうことを避けるため。
推理小説のスタイルを取りつつ進む物語。サバイバル能力に長けた、おちゃらけキャラの内人と、頭脳明晰のクールガイ、創也。この二人のコンビが、互いに長所短所を埋め合いながら、ジリジリと幻のゲームとゲームデザイナーの実体に迫る。
こんなに自分に合う作品があるなんて! の衝撃! 二十代の頃、ゲームデザイナーをフリーでやっていた時期の情熱が、フラッシュバックしました。



漫画部門


園田小波チョコミミ


夏休みに姪っ子が泊まりに来て、少女漫画をたくさん紹介してくれたのですけど、どれも作品としてのレベルが高く、刺激になりまくり! 特にこの、『チョコミミ』という四コマスタイルのラブ・ギャグマンガが最高でした!
中二の男女グループを中心にした作品なんですけど、キャラのつくり込み方や、グループ構成の設定・バランス感が突き抜けて素晴らしく、とか、語りたくもありますが、ただ、みんなかわいい、に尽きる。あれだけ個々が濃いのに、誰にも嫌悪感が生まれない系(システム)。


タラマサコ『おそ松さん


甥っ子には、噂の『おそ松さん』を借りました。「カラ松が一番好きだ」と知り合いの女の子に話したら「カラ松は男子に人気なんですよー」とのこと。わかる! 基本、男のカッコつけは痛いし、滑稽を通り越してギャグ。本人だけが気付いてない様も最高! あ、僕のことか? ビバ・ナルシス!

おそ松さん』のカラ松は、尾崎豊に憧れている設定らしいけど、僕は全然聴いたことがない。けど、時間の概念がどうとか、宇宙の先端がどうとか言っている時点で、その痛さ、面倒くささは、カラ松の類似品。尾崎豊も、たぶん、生と死の哲学だろうしね←こういう一言がカラ松!



詩集部門


最果タヒ『グッドモーニング』


この詩集は、実験精神旺盛な、自身のフレームをまだ知らない芸術作品。最新詩集『愛の縫い目はここ』は、完成されたフレームをステージにして高みに達していた。僕は、荒削りでスリリング、故に広大な、この処女詩集が好きでした。


最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』


今から自殺しようとしてる人の目前に、その高まるテンションに合わせ、自殺に適した状況が展開される様を、最果タヒさんは『自殺』ではなく『他殺』と言い切った。その一行にたどり着いた瞬間、最果タヒさんを好きになりました。



ちんすこうりな『女の子のためのセックス』


この作品が、最高過ぎて、好き過ぎて、はじめて書評というものを、連続的に二つ書かせて頂きました。
詳しくはこちらを↓


『男の子のためのセックス』
http://d.hatena.ne.jp/macromoai/20170803/1501746716


『伝言ゲーム』/『女の子のためのセックス』
http://d.hatena.ne.jp/macromoai/20170805/1501889805




他にも結構色々と、紹介したい作品はあるんですけど、今回はこのあたりで。ではでは。


植岡勇二