デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

「1Q84」に見るシンクロニシティ

村上春樹さんの新作「1Q84」が面白い。

すごいな!と思わされたのは、
こちらが意識的・無意識的に欲しているものを
絶妙のタイミングで与える展開の妙技。
まさに、作者と読者のシンクロだ。

例えば、話を読み進むうちに、
主人公の過去がちょっと気になったとする。
すると、そのタイミングをまるで計ったかのように、
小説に主人公の過去の回想シーンが展開されるのだ。

他には、無意識の奥の奥の方にある読者の
欲望というか、
「これとこれが繋がったらすごいんだけどなぁ」
的なことを無意識的に感じてるところに、
それが繋がるシーンがバーンと提示される。

これは、読者の心理を読むうまさか?
もしくは伊坂幸太郎のような計算高さ?とか
思う側面もあったが、やはり村上春樹さんの場合
少し違う気がする。

「読者と作者の無意識が繋がっている証拠」というか、
少し魔法めいた(心理学めいた)話になるが、
春樹さんの場合、書くという行為を通じて
自分の中に深く入ると同時に、そのトンネルを抜け
読者の心の中にまで同時に入っているのではないか?
(作者と読者の無意識のシンクロニシティ
そんなことを考えさせられたのでした。

ちなみにごく個人的に感じたシンクロは、

新作を読んでいて、描写の素晴らしい文章があったので
そこにアンダーラインを引こうとしたら、
次の文章が、
「○○はアンダーラインを引くかのように」
とあった。

新作がブレイクしている最中に、
石川県でオタマジャクシが空から降ってくるという
怪奇現象があった。
これは前作「海辺のカフカ」の魚が空から振ってくる
シーンに似ている!このタイミングがすごい!

物語の書き出しが、「世界の終わりとハードボイルド
ワンダーランド」のとある描写に似ているな、と
思い、ページを無作為にめくると
次に目に止まったのは、「ねじまき鳥クロニクル」の
書き出しの描写に似ているシーンだった。不思議。