「1Q84」に見るシンクロニシティ
すごいな!と思わされたのは、
こちらが意識的・無意識的に欲しているものを
絶妙のタイミングで与える展開の妙技。
まさに、作者と読者のシンクロだ。
例えば、話を読み進むうちに、
主人公の過去がちょっと気になったとする。
すると、そのタイミングをまるで計ったかのように、
小説に主人公の過去の回想シーンが展開されるのだ。
他には、無意識の奥の奥の方にある読者の
欲望というか、
「これとこれが繋がったらすごいんだけどなぁ」
的なことを無意識的に感じてるところに、
それが繋がるシーンがバーンと提示される。
これは、読者の心理を読むうまさか?
もしくは伊坂幸太郎のような計算高さ?とか
思う側面もあったが、やはり村上春樹さんの場合
少し違う気がする。
「読者と作者の無意識が繋がっている証拠」というか、
少し魔法めいた(心理学めいた)話になるが、
春樹さんの場合、書くという行為を通じて
自分の中に深く入ると同時に、そのトンネルを抜け
読者の心の中にまで同時に入っているのではないか?
(作者と読者の無意識のシンクロニシティ)
そんなことを考えさせられたのでした。
ちなみにごく個人的に感じたシンクロは、
新作を読んでいて、描写の素晴らしい文章があったので
そこにアンダーラインを引こうとしたら、
次の文章が、
「○○はアンダーラインを引くかのように」
とあった。
&
新作がブレイクしている最中に、
石川県でオタマジャクシが空から降ってくるという
怪奇現象があった。
これは前作「海辺のカフカ」の魚が空から振ってくる
シーンに似ている!このタイミングがすごい!
&
物語の書き出しが、「世界の終わりとハードボイルド
ワンダーランド」のとある描写に似ているな、と
思い、ページを無作為にめくると
次に目に止まったのは、「ねじまき鳥クロニクル」の
書き出しの描写に似ているシーンだった。不思議。