デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

静岡手創り市のはしもとさん

静岡手創り市。
正確には「ARTS&CRAFT静岡手創り市」

工房を持つ作家さんを訪れ、インタビューをし、
その内容のほとんどを編集なしで、
膨大な量ブログに掲載するという
小さく大きなメディア革命、
「手創り市・アトリエ訪問」

そこから僕の、手創り市ライターとしての
仕事がはじまった訳ですが、
最初の頃、よくクライアントから注意を受けたのは、
「『静岡手創り市』ではなく『ARTS&CRAFT静岡』と、
正確に表記して」
ということでした。

今考えたら、本当に素人臭い間違いを
堂々と行っていたなと思います。

さて、その静岡手創り市(あえて僕のブログではこの表記で)にも
ゆくゆく、夜間警備のバイトや、
ライターとして関わるようになり、
当時、10名以上いた大所帯のスタッフさんたちとも、
だんだんと打ち解けていったのですが、
その中に、今回、このブログを
書き起こしたくなるトリガーとなった
はしもとさんという女性がいます。

彼女のことを明確に認識出来るようになったのは、
確か、シミュレーションルポを行った年の、
年末に呼んで頂いた忘年会の帰り道。

僕とクライアントとはしもとさんの三人で
電車に乗ることになり、
並んで座る僕らの前の席に、
一人黙って、本当に嬉しそうに
ニヤニヤし続けている男性がいて、
それをクライアントが
「ああいう人、大好きなんだよね」と
ゲラゲラ相手に伝わるように笑いながら
男性と微笑みを交し合いはじめ、
そんなクライアントを、
「ちょっと、ちょっと〜」と
若干制止しながらも、僕とはしもとさんとで
笑うという構図が生まれたとき。

あまり話したことはないけど、その時思ったのは、
はしもとさんて器の広い人だな、ということでした。

そんな彼女と、選考会ルポ・シミュレーションルポ、
そして数年後の本開催ルポを通じて深く話すことになります。

はしもとさんは「現場の裏リーダー」とみなに認められる
現場力、決断の速さと行動力を持っています。
そしていつも全体を俯瞰しつつ、みんなの位置を
把握しながらその関係の糸の中で動ける人。

そんな側面が彼女へのインタビューや
開催風景を通じ、徐々にあらわになっていきます。

彼女のことばは、夢と妄想で出来た僕のことばとは
大きく違い、その90%が「リアル」で出来ていると僕は感じます。
残りの10%は「未来にやり遂げたいこと」
ですが、それさえも「リアル」の90%の中で、
実際行動するであろうと感じさせる、
または行動する証となることばと
直結しているのです。

そんなはしもとさんへの取材は毎回楽しくて楽しくて。
開催を追うごとに変わっていく静岡手創り市とともに、
彼女自身もその歩幅を合わせるように、
懸命に変わろうとし、そして実際に変わってみせる。
その行動力、姿勢には、
自らに決意をかせる人独特の、美しさのようなものも感じます。

さて、そんなはしもとさんを、
僕はもう、手創り市のライターとして
インタビューすることはありません。
四月の本開催ルポを最後に、
手創り市を卒業したからです。

と、いいつつも、やはり、静岡手創り市には行きたいし、
静岡のみんなに会いたい。
そこで、以前のクライアントと相談し、
会場の前日準備と、夜間警備をやるという約束のもと、
今回も、彼の静岡行きの車に乗せて貰ったという訳でした。

そして、会場ではしもとさんに会った僕は、
僕なりのルポの続きをはじめました。
最早、ライフワークのようなものですね。

「Hさんは、前回の開催のとき、会場入り口の小屋と、
作家さん、そして会場を結ぶような何かを、
小屋から発信するのではなく、会場・現場にいながら
やれるようにしたいって言ってたでしょう?
それはどうなりそう?」

すると彼女は、少し難しい顔をしてから、

「わたし、今回の選考会に参加出来なかったんだよね。
どうしても抜けられない仕事があって。
作家さんを直接選ぶ場所に足を運べなかったわたしが、
それを今回の開催で企画する資格はないなって思ってる。
だから、今日、明日の、開催中が勝負。
作家さんや会場を回って次につなげるものを見つけるよ」

と、答えたのでした。

そして僕が、
「楽しくなるといいね」
と、ことばを返すと、
「当たり前だよ。絶対楽しくしてみせる。う! プレッシャー!!(笑)」
と言って、会場の人混みの中に消えて行ったのでした。

静岡手創り市・「ARTS&CRAFT静岡」とともに
成長・変化し続けるはしもとさん。
これからも彼女の変化が楽しみです。

また、遊びに行きます!


ウエペヨ