今福龍太X吉増剛造 書物の影(ヴィジョン)に触れる
というトークショーに行ってきました。
この春産まれた文化人類学者・今福龍太さんの書物
「身体としての書物」を
一ヶ月間、詩人・吉増剛造さんが肌身離さず持ち、読み込み、
そこに流れた時間を吉増さんが
「剛造シネ」として映像作品に昇華させ、
僕たちがそれを体験する、
という内容も含めたトークショーでした。
以下、イベント内で印象に残ったことを記します。
・イベントに一緒に言ったチヒロゴハンさんが
「答えは問いの発するところにある」という禅の言葉を
教えてくれた。
・本は、産まれてからが大変(今福)
・何かを部屋の壁に貼り付ける。するとそれは時間をかけて自分の中に肉体化していく。難しい哲学でも、10年壁に貼っておけば、いつのまにか血肉化するだろう。(吉増)
・中原中也は一日12時間歩いていた。その中で見たもの、聴いたことを彼は詩にしていたのではないか?頭で読んでいたのでは、彼の詩はわからない。天性で読む(吉増)
・本はいつのまにか記号化してしまった。本棚にオブジェとして並べられ、向こうから語りかけてくるものになった。昔は本の虫がいた。
本の虫とは本の匂いを嗅ぎ、こちらから本を食べに向かうものだ。(今福)
・忘れてしまった記憶は絶対に回復されない(今福)
・ダンテの神曲の三部(天国・煉獄・地獄)ともみな同じ単語で終わっている。その単語は「star」。(今福)
・現代音楽家・ジョン・ケージが無響室(完全に音がしない部屋)に入ったとき、ケージは自分の体内に流れる音を聴いた。完全なる沈黙などこの世には存在しない。(今福)
・最近、水溜りが少なくなった(今福)
・見えないものを見ようとする視点では、車さへ水牛に見える。(吉増)
・本は2次元のものではなく多次元的なものだ(チヒロゴハン)
・今福さんは様々な国の言語を使うが、それを特別意識はしていないとのこと。すべての言葉は音である、と言っていた。そこに違いはないと。つまり、すべてを波(波長)のような感覚で捉えているのではと僕は思った。(ペヨー太)
・吉増さんの言葉、しゃべり方。フォーマットにはめない言葉。言葉は羽を広げ、世界に溶け込んでいくのが眼に見える。(ペヨー太)
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なにはともあれ、今回のトークショーは本当に様々な気付きがあった。その中でも一番心を打ったのは、吉増さんの自由さと
それに反比例する僕の不自由さだ。
僕は自分をどこかで自由だと思っていた。
しかし今回、様々な抑圧や、何重もの殻が自分を包んでいることを
吉増さんに気付かされた。
これが一番の収穫かもしれない。