デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

太古の天使

思考が一瞬で十五以上の階層を成し、遥か彼方の答えを奪い去る。
その階層を駆け抜ける速度のことを古代の人々は「天使」と呼んだ。
彼らは、速い思考に追いつける程の、魂の速度を得る為に、自ら毒を飲む。
その毒が犯すものは「時間」そのものだ。
時間を犯す毒は甘く、代償に、人々から夢の国を奪い去る。
夢を奪われた人々は、やがて現実の中に夢の穴を見かけるようなる。
そしていつしかその穴が、身体中に空いていることに気付く。
その時、最早完全に、時間は崩れ去っている。

壊れた音楽の中で息を飲み、また毒を食らう。
身体は夢を吐き出す活火山となり、
あらゆるテスクチャーに夢という火山灰を振りかける。
そしてすべてが夢に変わる。
逆転した世界の中で、
彼らは時間の不思議に出会う。

  *

無意識の最果てでは思考が王国を成す。
そこでは、規定的な思考が王国のルールになる。
しかし、自分で自分が何をどう規定しているのか?
そのすべてがわからないように、
自らの無意識が王国のルールを規定していることにも気付ないまま、
旅人は王国から弾き出されてしまう。
その王国は自分自身だというのにも関わらず。

無意識の最果てではすべてのものがつながっている。
何かを思考した瞬間、その思考が蜘蛛の巣のように
全宇宙に広がり、一瞬にしてその思考を中核とした
宇宙、つまりは運命を描き出す。

彼らは今、どのあたりにいるのだろう?
無意識の最果てに辿り着き、
この世界を王国に変え、
すべてのつながりの中で明滅しながら
今ここにあるのだろうか?

実は今、無意識の最果てにいたとしても
それに気付かないまま
毎日を過ごしていたとしたら?
無意識に規定した自らのルールに疎外されていたとしたら?

  *

意識を失うことによって
初めて観ることの出来る映画を上映する映画館
スクリーンから溢れる夕日を浴びて
ざわめきはじめたイグアナの女たち
噴火する火山がプリントされた日傘を
急いで折りたたみ
坂道を駆けおりる

イグアナの女たちは列をなす
その先頭を走る彼女にだけ瞼がない

彼女は生まれてこの方眠ったことがない
背中に咲いた一輪の赤い花
その花が落ちるとき その落ちた花を自分の
口に運ぶとき 
彼女に乾いた瞼が生まれる
彼女は初めて眠りにつく
彼女は初めて夢を観ることができる
私たちの世界は
そこから
始まる

彼女の後ろで
列をなしていたイグアナたちが一斉に破裂する。
夏の太陽が
水鏡に映る自らの姿を凝視しながら
自らの瞳をつぶす
破裂したイグアナたちは拡散する。
噴火する火山がプリントされた日傘だけが
白い砂浜に置き去りにされる 

日傘の中の火山は噴火をやめない
そして、夢観るイグアナの女は 
逆回転の寝言を吐く