デジタルzin!ポエジン『宇宙塵』/即興詩人・AI UEOKA

即興詩人・AI UEOKAによるデジタルzin! 雑多な芸術・らくがき日記。

『最果て』

最果てを目指し 加速度をあげる
最果てを目指し 魂の加速度をあげる
魂を加速させるためなら『毒』さえも食らう


毒が犯すもの
毒の副作用がもたらすもの
それは 時間の変化だ


時間が壊れはじめる
時間が壊れはじめる
時間が毒に犯される
時間が毒に犯される
時間を犯す毒は甘い
時間を犯す毒は甘い


例えば彼女から貰ったNECのカレンダーを
何気なく眺めていると
不意に その風景写真から
赤いクジラが現れる


その時 もはや完全に 
時間は崩れ去っている


やがて あらゆる場所から
夢という夢が溢れ出す


夢が現実を完全に強姦し
そして 世界が夢に変わる


それでも彼は 加速することをやめない


現実を奪われ
夢に犯されても
彼は魂を加速させることをやめない


この世界さえ振り切るように


   *


無意識の最果てでは
思考が王国を成す


無意識の最果てでは
思考が王国を成す


そこでは
規定的な思考が王国のルールになる


しかし 自分で自分が
何をどう規定しているのか?
そのすべてが誰にもわからないように
自らの無意識が
王国のルールを決めていることにも
気付けないまま
彼は 王国の門から弾き出されてしまう


その王国の門そのものが
自分自身だというのにも関わらず


それでも彼は再び
その門の前に立つだろう


自分自身をより深めることによって
最果てにある王国のドアを
開け放つために


   *


やがて彼は 王国の門を開け放つ


そして悟る
ダークマターの正体を


この宇宙の無意識=ダークマター


ダークマターは火山だ
その噴火口から
さらにダークマターが噴火する


彼らは噴火を繰り返しながら
無限に増殖していく


火山の鼓動に合わせて踊りながら
煮えたぎるマグマに合わせて踊りながら


巨人は踊る
巨人は踊る
血の匂いを追い求める
血の匂いを追い求める
血の匂いにダークマターが射精をする
血の匂いにダークマターが射精をする
この物語に終わりはない
この物語に終わりはない
血が血を結び
噴火が噴火を呼び込む
血が血を結び
噴火が噴火を呼び込む


そして彼は
無限の黒い花に生まれ変わる
沸き上がる花
沸き上がる花
噴火する花びら
噴火する花びら
花びらを食らう 黒い巨人の群れ
花びらを射精する 黒い巨人の群れ


巨人の群は足踏みをはじめる
加速する足音
増大する足音
宇宙を揺らす足音
そして すべての巨人の足音が
ひとつに重なり合ったその瞬間


一輪の白い花が爆発する


白一色に染まる広大な宇宙


白い爆風に焼き尽くされ 
黒い巨人の群は 
白い巨人の群れに生まれ変わる


そして その手の中には
慈しむように 黒い花が一輪ずつ 
握られている


最果て






詩集『そりゅうしのうた マイナビ現代詩歌セレクション』より

詩とは何か? 

太陽は

永い旅を経て

出会いを味わい


反射され

やさしく砕かれ


完成する


(1998年作:『太陽』)


Q:詩とは何か?
A:言葉が羽化して音楽になること。そう感じていた二十代。



最果てを目指し 魂の加速度をあげる

魂を加速させるためなら 毒さえも食らう


(2010年作:『最果て』より抜粋)


Q:再び、詩とは何か?
A:向こう側に渡るための橋。そう信じていた三十代。


こころのそこに

ながれる

つめたいひょうがを

わたる

ふたりきりで


(2016年作:『たなばた』)


Q:今、詩とは何か?
A:生活の中に、当たり前に流れるもの。そう気付いた近年の作品まで。


二十歳の春から二十二年間書き起こしてきた三十六篇の詩を収録。


素粒子。それは、物質を構成する最小の単位。とある宇宙論では、素粒子は振動する『ひも』のようなものとされている。振動。それは、音楽の正体。心に音を与えることにより、形を描く『言葉』という素粒子。それらが響き合い、編まれ、生まれた宇宙が、この詩集です。
表紙:白想景『素粒子の唄』

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